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2017
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『うちのおとう』 千鳥大悟
CATEGORY千鳥
あのー、僕、瀬戸内海の小さなすごい田舎の島で生まれ育ったんですよ。で、本当にバスもタクシーも信号もない、コンビニとかもないんですよ。だからちょっとみなさんとは生まれ育ってきた環境が違うといいますか、で、その島には島のルールみたいなんかが、あのやっぱり東京都とは違うんすよね。で、まぁうち貧乏ってのもあったんですけど、そのすごい昔ですよ、小学校3年生くらいの時、今はそんなことしてないですよ。昔の移動手段がカブに板くくりつけて兄弟3人でしがみついてたんですよ。こういう状態で姉ちゃん、姉ちゃん、僕みたいな。島ですから。
で、僕の友達にも車持ってるやつとかもいて、で、運動会の日にいつものようにお父が、「帰るぞ、乗れ乗れ」ゆうて、でもみんな友達が見てる、車で帰っていく中、カブの荷台の中板にくくりつけたやつに乗ってるのちょっと恥ずかしいというか、こんなーこんなのは嫌やなと思って、で家帰ってちょっと落ち込んでたんですよ。ほいだら、お父が「なにをーお前、落ち込んでるんじゃい」って、で僕も「あのー車欲しいわ」ってゆうたんですよ、ほいだらうちのお父が「なんやお前、車欲しかったんかい」ってなって「はよ、言わんかい、そんなこと日曜日まで待っとけ」ゆうて、でわし、日曜日になったらお父が車買うてくるわ、思うて。で日曜日まで待ってたら、お父がカブの荷台の中板を取って、そこに発泡スチロールをくくりつけたんすよ。で、その発泡スチロールにうちの島で取れた海の幸の冷凍をパンパンに積みだしたんすよ。で、それを乗っけて「帆なら、行ってくるわ」ゆうて、フェリーのって、カブのまま、で本土に行ったんすよ。
で、後々聞いたら、そこに電話の権利書とかも挿んでたらしいんすよ。でとにかくうちのお父は、その海の幸とカブ一台で、お父は本土に向かって、夕方くらいにボロッボロの軽自動車で帰ってきたんすよ。物々交換で帰ってきたんですよ。誰にどう頼んだのか。いまだに忘れないですけど、小学校3年生くらいの時に、こんな車があるのかっていうくらいの、銀色の。安い灰皿の銀なんですよ。の軽で、でボロボロで、4WDって書いてあるんですよ。でも絶対4WDじゃないんですよ。お父が乗って帰ってきて、ほんで「車じゃぁ」ゆうて、で家族で初めて、家族5人で島をドライブを、夕方するぞってなって、でお父が運転しますよね、おかあが横にのって走ってたら、うちの島、信号がないんで、最初の曲がり角でクラクションを鳴らしたんですよ。で、パッって鳴らしたら、パーーーーーーーが止まらなくなったんですよ。もう何をしても止まらないんですよ。パーーーーーなって、ボロボロの銀の4WDで山本家はもう島を1周せんと帰れんから、で家に帰るまでこの車を買いましたよ、みたいな。アピールみたいな、パーーーーー。ほんでお姉は顔真っ赤にしてもうやめてくれみたいな。お母もまた「もう車止め―」みたいな「恥ずかしいから止めー」みたいな、でももうどうしようもないじゃないですか。こんな時ってうちの親父が一番つらいはずなんですよ。どう考えても、そんな時、うちのお父はどうなってんのかなって横目でお父のこと見たら、お父、真っすぐ前を向いて、小っちゃい声で「ぱーーー」って。
(終)
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で、後々聞いたら、そこに電話の権利書とかも挿んでたらしいんすよ。でとにかくうちのお父は、その海の幸とカブ一台で、お父は本土に向かって、夕方くらいにボロッボロの軽自動車で帰ってきたんすよ。物々交換で帰ってきたんですよ。誰にどう頼んだのか。いまだに忘れないですけど、小学校3年生くらいの時に、こんな車があるのかっていうくらいの、銀色の。安い灰皿の銀なんですよ。の軽で、でボロボロで、4WDって書いてあるんですよ。でも絶対4WDじゃないんですよ。お父が乗って帰ってきて、ほんで「車じゃぁ」ゆうて、で家族で初めて、家族5人で島をドライブを、夕方するぞってなって、でお父が運転しますよね、おかあが横にのって走ってたら、うちの島、信号がないんで、最初の曲がり角でクラクションを鳴らしたんですよ。で、パッって鳴らしたら、パーーーーーーーが止まらなくなったんですよ。もう何をしても止まらないんですよ。パーーーーーなって、ボロボロの銀の4WDで山本家はもう島を1周せんと帰れんから、で家に帰るまでこの車を買いましたよ、みたいな。アピールみたいな、パーーーーー。ほんでお姉は顔真っ赤にしてもうやめてくれみたいな。お母もまた「もう車止め―」みたいな「恥ずかしいから止めー」みたいな、でももうどうしようもないじゃないですか。こんな時ってうちの親父が一番つらいはずなんですよ。どう考えても、そんな時、うちのお父はどうなってんのかなって横目でお父のこと見たら、お父、真っすぐ前を向いて、小っちゃい声で「ぱーーー」って。
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